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2月のこと② 作曲のご依頼

更新日:3月8日

2月にもう一つ注力したのは作曲でした。アレンジや即興の経験はあるものの、丸々一つの曲を作曲すること自体が初めてで、稀有な経験をさせていただきました。


ご依頼者は、三島の伝統芸能「しゃぎり」を行う芝町青年会の方。しゃぎりは江戸時代発祥の祭り囃子で、毎年お盆に行われる三嶋大祭では山車が三嶋大社一帯を取り囲み、街全体が笛と鉦と太鼓の音に包まれます。

伝統芸能なのに新しく曲を作るの?と最初は思ったのですが、なんでもここの青年会では会の活性化のために、会のみなさんで新曲を作り続けているのだそう。今年は青年会発足から100年で、その記念になる曲を作ってほしいという光栄なご依頼でした。


いつか作曲をお願いしたい、ということは随分前から仰っていただいており、その度に経験がないからとお伝えしていたのですが、今年は100周年なのでと正式にご依頼をいただき、これは本気で取り組まなければならない、と私も腹を括ったのでした。


秋の演奏シーズンが落ち着いた年末に三島に伺い、青年会のみなさまからリクエストを聞き取り、作曲に取り掛かりました。

しゃぎりのほかの曲を毎日流しながら書き取り、鉦や太鼓のパターンやリズムを分析したり、同じ旋律やリズムが登場しないように気をつけたり。タイトルやイメージはかなりはっきりいただいていたので、それに合うような音を試行錯誤しながら見つけていったり。

笛と鉦をお借りして、どういう音が吹きやすいか、鳴らしやすいか、演奏効果が発揮されるか、など実際に吹いて鳴らして試してみたり。


作曲にあたり、これまでに天平楽府や森町で横笛を演奏してきた経験に本当に救われました。

伝統音楽の体系をある程度把握していることや、響きや指遣いが体に落とし込まれていることで、伝統音楽らしい形と、そこから外れた形を敢えて作ってみたり、2つを掛け合わせてみたりというような試みもできました。これまでの全ての経験に感謝です。


とはいえ、しゃぎりのことを一番わかっているのは演奏する当事者の方々で、三島のことも一番よくわかっていらっしゃる。しゃぎりについても三島に対しても、部外者の私には分かり得ない強い情熱や愛情があることと思います。

伝統といえども長い歴史のなかでの変遷は必ずあるので、しゃぎりの方々には、「今はできた曲を練習していただきながら、演奏する方々の好きなようにどんどん変えていってください」とお願いしています。「私が作った曲」というよりは、みなさんの中に私が入れさせてもらって「みんなで作った曲」にしていただきたいなと思っています。そのようにして、この先も長く愛されていく曲になるといいなと思います。


そんなことを青年会の方とお話ししていたところ、こちらの映像をご紹介していただきました。→「しゃぎりが在る」というタイトルで、若い女性2人のしゃぎりへの思いを中心に収めた記録です。

しゃぎりもほかの地方伝統芸能と同様、以前は女人禁制だったそうですが、今は女性の担い手も多いです。彼女たちのしゃぎりに対する想いを見て、地元に伝わるお祭りが今も続いていることや、そのことに誇りを持っていることにじんとしました。

心に温かく沁みるインタビュー、ぜひご覧ください。


このような方たちのために曲を書けたことが本当に有り難く、人とのご縁の尊さを実感しています。

曲のお披露目は7月15日と16日に、芝町の氏神様である浅間・芝岡神社のお祭りにて初披露する予定だそう。私も楽しみに、そして若干の気恥ずかしさとともに、その瞬間に立ち会いたいと思います。

詳細がわかりましたらまたご案内いたしますので、お近くの方はぜひ足をお運びくださいましたら嬉しいです。


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