10.30. Special lecture of University of Shizuoka, “Instruments and music of Tianshan Corridor, Silk Road”.
静岡県立大学特別講義、「シルクロード天山回廊の楽器と音楽」。
ウイグル公演からちょうど一年が経ち、ウイグルの話をようやくすることができました。といってもほぼ演奏と移動しかしていない、そしてとにかくトラブル続きだったウイグル滞在のことは、話としては面白いけど、高等教育機関での講義内容としてはあまり膨らませられず、写真を見ていただくだけにして、現地の楽器と音楽の変遷というところに焦点を当てて話をしました。
講義にあたり、楽器と音楽を深掘りしていけばしていくほど、ウイグルの地の歴史的特殊性から文化の豊穣さが明らかになってきて、こんなに面白い音楽文化を持つ場所があるのか!と驚きの連続でした。
世界無形文化遺産にもなっているウイグルの伝統音楽体系「12ムカーム」は、基本的には微分音を多用するようですが、地域によってそのベースが五音音階だったり、半音の多いアラブ音楽に近かったりと、音楽からも文化の多層性がわかります。この動画のムカームなんて、もうなんて格好いいのでしょうか!
講義資料を作っていた2週間、ずっとこういう音楽やイスラムのアザーン、インドのヴェーダなどを聴きながら作業をしていたので、通りがかりの人や近所の人たちにはこの家は一体何をやっているのだろうと思われていたかもしれません笑
現地に行き体感し、調べていくなかで実感したのは、東西文化の比較の前に、東西文化が生まれた西と東の間にある地の文化に目を向けることが先なのではないかなと。クラシックの音楽史はなぜギリシャ時代からなのか、ギリシャよりずっと以前の時代に西と東に繋がるものがあるのに、とも。そう思うと、県大の先生方のご研究の先見性や卓越性に改めて感服します。
ウイグルの写真、資料作りでようやくまとまったのでご覧ください。食べ物も美味しく、風景も美しかったですが、何より人の温かさが一番心に沁みた滞在でした。
そして、シルクロードからの伝来楽器を現地で演奏することや、現地の民族楽器の演奏家と共演することには、そこにどのような政治的な背景や事情があろうとも、一音楽家として、ただ音楽という一点のみにおいて、とても意義深いものだったと感じています。